■会社員だけでなく、公務員も厳しくなっている?
先日、大家さん仲間が、「金融機関の担当者が、『一棟目の会社員には融資を控えるようにと金融庁から言われている』って言っていたよ。これから始める人は大変だね」と話していました。
気になったので、取り引きのある金融機関の担当者を訪問して状況を聞いてきました。すると、「そうなんです。最近は特に厳しく言われるようになりまして」と言います。以前は融資を出しやすかった公務員の方への融資も今は難しくなっているそうです。
一棟目でも、5千万円のアパートに対して2千万円の自己資金がある場合など、例外もあるそうですが、基本的に未経験の方へは融資が難しいので、できれば賃貸業の実績を作って窓口に相談に来て欲しいということでした。
そこでもう少し突っ込んで、「実績とは具体的にどのレベルなのか?」「今の状況でどうすれば融資相談のテーブルに乗ってもらえるのか?」についても聞いてみました。
例えば、全額自己資金で戸建を購入して不動産経営を始めたケースなどはどうなのでしょう?
すると、「戸建投資でも実績として評価できる可能性はある。その際に、確定申告書は2年分以上あると良い」という返事でした。
戸建てを現金で買って大家になった人が、今からその先のアパート融資を見据えて何かできることはあるかと聞いたところ、次のようなアドバイスをもらいました。
・最初の物件の家賃の入金口座を信金や信組など、将来融資相談が出来そうな所に開設し、毎月の入金の実績を作る
・最初の段階から融資の担当者へ、「将来はアパートを融資で買いたい。その為に今から準備をしている」と伝え、関係づくりを意識しておく
金融機関は本人がどのような想いで賃貸経営をしたいと思ったのかなど、ストーリーを非常に大事にするので、アパートを買う段階でいきなり融資の相談に来るのではなく、事前にそのあたりを教えてもらいたいというお話です。
いずれお世話になりたい金融機関が今は分からない場合は、地銀さんでもいいので口座を開き、通帳に入金実績を作っておいて、将来、融資をお願いしたい金融機関さんにその通帳を見せるのも有効だそうです。
それでこれまでのストーリーが相手に伝わるし、賃貸業に対する本気度が分かるから、というのがその理由です。
■日本政策金融公庫の姿勢
日本政策金融公庫でも話をうかがってきました。
「公庫では最近、戸建の融資を受けるのが厳しいと聞いたんですが、本当ですか?」と訊くと、「間違ってはいません」と言っていました(笑)
ただ、戸建だから貸しづらい、アパートだと貸しやすいということはないそうです。
いわゆる総合的な判断で決まるということですね(笑)。以下、ざっくりと担当者の方のお話をまとめました。
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・融資をするかどうかの判断は「物件」の評価次第
・取引実績や経験の有無よりも「物件」を重視する傾向が最近は強くなっている
・返済比率の基準はないが、築古戸建は今後の家賃の見極めが難しく、厳しめな家賃設定になるため、収支が合わないと判断され融資が通らないということになりがちである
・利回りを求めると築古になるが、「築40年」を超えると評価は出ない。かといって築浅は価格が高く収支が合わないので、公庫としてもそこが歯がゆいところである
・運営中のリスクを考えると頭金以外にもある程度の自己資金がないと融資は難しい
・具体的には、3,000万円のアパートの場合、自己資金1,000万円くらいは入れて欲しい
・金利は無担保の場合2%前半。担保提供ありだとそこからマイナス1%
・融資年数は、例えば築20年程度の木造アパートなら期間10年が限度
・他での借り入れが多いと判断されると融資できないことがある
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付け加えると、そうはいっても全てケースバイケースなので、相談に来てほしいという話でした。ちなみに公庫の融資相談はまずWEBで申し込み、後日担当者が決まり次第、先方から連絡が来る流れになっています。
公庫というと、以前は取引実績がある人にはあれこれと融資が効くイメージでしたが、今はその傾向は弱まり、「物件単体の評価」を重視する傾向が強まっているのだなと感じました。
■それでも今から始めるなら
焦る気持ちをグッと抑える為にも、ここで私が5年前に購入した戸建を紹介したいと思います。
この時は融資を使って購入しましたが、これくらいの価格ならば現金で買える人もいるかと思います。「融資使ってんじゃん!」という突っ込みは置いておいて、一部の人の参考になれば幸いです(笑)。
この戸建は、ポータルサイトでオーナーチェンジ戸建として売りに出ていました。問い合わせを入れると、たまたま知り合いの大家さんの物件でした。そこで、申し訳ないと思いながらも、指値の相談をさせて頂き、まとまったところで買わせていただきました。
場所は札幌市内で当時で築43年、広さは160㎡以上ありました。価格は550万円で家賃は月額8万円。利回りは約16%です。戸建ですがオーナーチェンジ物件でしたので、購入した日から家賃を頂けるのが良い点です。
オーナーチェンジ物件の場合、過去のリフォーム履歴が入手できないことが多いですが、この物件は知り合いの大家さんの持ち物だった為、詳細なリフォーム内容を確認することができ、安心して購入に進むことができました。
この時は日本政策金融公庫で融資を受けました。(前述の通り、今は築40年を超えると評価が出ないそうなので、今ですと公庫でも融資は使えないかもしれません)。
この時は、諸経費もいれた総額約580万円のうち、自己資金を約2割の130万円を入れ、融資を450万円して頂きました。金利2.06%で期間は10年でした。当初月の返済が4.6万円でしたが、元金均等払いなので、今は4.3万円ほどになりました。
管理費や固定資産税、年間の火災保険料などを加味すると、月額2万円程(税引前)のキャッシュフローです。購入から5年以上経ちますが、未だに退去や大きな問題もなく順調に運営出来ています。
月2万円のキャッシュフローと聞くと少ないと感じるかもしれませんが、約5年間で累計のCFは130万円となり、購入時に投じた自己資金はほぼ回収できました。さらに、当初450万円あった借入も今は200万円です。ゆっくりですが、安全圏に着実に近付いていると思います。
余談ですが、この家を解体し、更地にして売った時の土地の価格は約1,300万円になると予想されます。これくらいの戸建でも5年で1,000万円くらいの自己資金を作れる可能性があるということです。
そうやってまとまったお金ができれば、その自己資金と過去の賃貸経営の実績を見て、アパートの融資をしてくれる金融機関も出てくるでしょう。不動産でお金を増やす方法は様々ななので、皆さんも工夫してみて欲しいと思います。
■融資情勢は日々変わる
「5年前だからできたんじゃない?」と感じた方もいるかもしれません。確かに、今はその時より相場が上がっています。しかし、令和6年3月現在でもポータルサイトには、札幌で価格400万円台、利回り13%くらいから物件を見つけることができます。突拍子もない話ではないということです。
融資情勢は日々変わります。エリアも金融機関の特性も様々ですし、聞く相手が変われば答えも変わります。現に、今現在も「一棟目を買う会社員」の方に融資を出している金融機関もないわけではありません。
どんな時代でもその時の自分に出来るやり方でスタートを切るしかないと思っています。今でもきっと、道は存在します。一棟目ではありませんが、私自身も、自分の目で昨今の融資情勢を確かめていければと思います。
それでは、また次回お会いしましょう!