今回の大家対談は、8年半前に不動産投資を始め、これまでに98億円( 中古28億円+新築70億円 )の不動産を取得したという図越寛さんがゲスト。ホストは図越さんと交流の深い極東船長さんです。
20才以上年齢の離れた二人ですが、不動産投資に対するスタンスには通じ合うものがある様子。一回目の今日は、図越さんが不動産投資を始めたきっかけや拡大のロジックなどについて話が弾みました。
※98億円:41棟( 中古24棟+土地17件 )+1,066戸※売却済・建設中含む
8年半で98億円の不動産を買えた要因は強いマインド
極東船長さん
今日はよろしくお願いします。図越君と初めてきちんと話したのは、図越君が大阪に建てた一棟目RCの「 ブエナビスタ難波南 」( なんば駅徒歩9分 )の見学会だったと思います。ブエナビスタというのは、図越君の会社の名前で、すべての物件にこのシリーズで名前を付けているんだよね。
図越寛さん
はい、そうです。ブエナビスタとは、スペイン語で「 絶景・美しい眺め 」という意味です。所有不動産を常に美しく保ちたいという創業理念を表しています。新築RCに関しては、ハイグレード都市型レジデンス「 ブエナビスタシリーズ 」と名付けております。
出会った初期の頃の写真( 中央が図越さん )、撮影場所:ブエナビスタ難波南の屋上( 2015年11月 )
極東船長さん
中に入ったときは驚いたよ。建物内にBGMが流れているし、クロスはホテル仕様のものだし、ここまでやるなんて、賃貸マンションの枠を飛び越えていて、この人は普通じゃないと感じました。
図越寛さん
分譲マンションのような高級賃貸を作りたかったんです。新築RCに取り組むまでは地方中古1棟RCが多かったので、投資戦略を180度変えまして、都心部駅徒歩10分以内で新築RCを攻めようと考えました。その際には、どうせやるならば、安かろう悪かろうの物件ではなく、ハイグレード仕様で差別化を図ろうと考えました。
極東船長さん
なるほどね。図越君は2010年に不動産投資を始めて、これまでに41棟 ( 中古24件+土地17件 )購入して、取得価格は98億円( 中古28億円+新築70億円 )だそうですね。売却もしてこれよりは減っていると思いますが、8年間でここまで来たのは、強いマインドがあったからだと感じています。
図越寛さん
中古は売却したので、現在は建設中物件を含めますと16棟438室、建設中物件が竣工しますと家賃年収は4億7千万円くらいです。
ブエナビスタ社の売上等の推移
極東船長さん
それにしてもすごいスピードだよね。子供の頃はどんな環境で育ったんですか?
図越寛さん
兵庫県の甲子園球場の近くにある普通の一般家庭です。資産家ではありません。それどころか、病気で早く亡くなった父が遺した自営業の融資負債( 信用保証協会付き融資 )が数千万円あり、自宅は母が残したいということで、自宅資産( 団信により無借金 )の方が融資負債よりも上回っていたことから相続放棄しませんでした。
創業当初、私自身が信用保証協会付き融資を申し込んだ時、その相続負債持分が発覚して、それを返済しないと融資不可といわれたので、歯を食いしばって300万円を返済しました。とんだ災難でした。
大家になる前は投資用マンションの営業マンだった
極東船長さん
そうだったんですか。不動産投資を始める前の仕事は?
図越寛さん
投資用ワンルームマンションの販売会社の営業です。大学卒業後は通信系の会社に就職したのですが、歩合給目当てでこの会社に転職したんです。
極東船長さん
ワンルームマンション? オイラは平成7年に東京の世田谷区にあるワンルームマンションを買って、札幌の一棟アパートと比較してみたことがありますよ。その頃はワンルームでも値上がりが期待できたんですが、融資の足を引っ張ることがわかって結局、手放しました。
当時の名簿が今も出回っているようで、ときどき業者から電話がかかってきます。正直、いい印象は持ってないな~。図越君もそんな仕事をしていたんだね。
図越寛さん
その通りです( 笑 )。ワンルームの販売会社では売り上げがすべてです。私の場合、3年目がピークで4年目から成績が落ち、社内で肩身が狭くなってきました。
同時期に会社のビジネスモデルにも疑問を持つようになり、身の振り方を考えた先で不動産投資に出会いました。子供が生まれたことも影響しています。
極東船長さん
オイラも3人の娘たちの教育費のために不動産投資を始めたんですよ。その時、何才でしたか?
図越寛さん
29才です。この先、どうしようかと考えていると、本棚にあった金森重樹さんの「 1年で10億作る!不動産投資の破壊的成功法 」が目に入り、「 年収500万円のOLさんでも買えた 」と書いてあるのを見て、希望が湧いてきました。
僕はこだわる性格で、やるからにはとことんやるので、必死のパッチでした。まさしく寝る間を惜しんで勉強したり、銀行融資のための提出資料の作成に明け暮れたりといった感じでした。
極東船長さん
どんな方法で勉強したの?
図越寛さん
平成22年の5月に今田信宏さんの「 光速投資法 」の商材を買い、これが不動産投資の教科書になりました。簡単にいうと、耐用年数の残っている積算評価が高い一棟マンションをできるだけ少ない自己資金で購入するというやり方です。当時は評価が出ればフルローンも出ましたので、買い進めることが出来ました。
まだリーマンショックの影響も残っていて、今より物件が3割くらい安く買えた時代です。例えば、築20年くらいのRCマンションが利回り12%でも見つかったので、そういう中から返済比率が40%以下になるものを探しました( 許容範囲は50%まで )。自己資金は夫婦合わせて約500万円。最初に目指したのはCF500万円です。
図越さんの不動産投資の指針となった本
一棟目を買ってから2ヵ月でサラリーマンを卒業
極東船長さん
始めてみて、うまくいきましたか?
図越寛さん
それが、欲しい物件を見つけて3つの銀行( SMBC、オリックス、スルガ )に持ち込んだところ、「 不動産会社の社員さんは、公務員の方や上場企業の方と比べますと属性としてマイナスです 」といわれ、出鼻をくじかれてしまいました。自分の仕事はそういう見られ方をしているんだとショックでしたね。今でもその銀行はクソだと思っています( 笑 )
一方、信用金庫さんは「 不動産会社の社員さんなら、不動産のことをよく知っているから、公務員の方や上場企業( 不動産業除く )の方と比べますと、少なくとも経験値はあるでしょう。むしろ、稟議は上げやすいです 」と前向きな返事をくれました。
ウワサでは、プロパーローンの信用金庫よりもアパートローンの銀行の方が借りられるという話でしたが、私の属性では逆だったんです。それ以来、どんなこともセカンドオピニオンをとって、自分の価値判断で決めていくことを心がけています。
極東船長さん
確かに。ウワサ話は鵜呑みにしない方がいいとオイラも思います。それで、1棟目はどんな物件を買ったんですか?
図越寛さん
和歌山県紀の川市の6,000万円のマンションです。築30年・22室で空室率が50%と高かったものの、満室想定表面利回りは25%。信用金庫さんで期間15年・金利3.9%で借りても返済比率が40%以内だったので購入を決めました。ただ、建物はめちゃめちゃ汚れていて、共用部の電気は切れ、粗大ゴミも放置されているという状態でした。
写真はブエナビスタHPより抜粋
極東船長さん
最初からチャレンジングですね。
図越寛さん
光速不動産投資の教材で勉強した後に今田さんが出版された「 満室経営バイブル 」を読みましたところ、「 きちんとやれば空室は埋まる 」と書いてあったので、満室に出来ると考えました。
購入後に大規模修繕費用が足りなくて日本政策金融公庫( 旧国金 )で追加融資を受けるなど、想定外のこともあったものの、半年で満室にできたことで自信がつきました。
2棟目は1棟目を買った翌月に、滋賀県草津市の1棟マンションを買いました。こちらは2DKが30戸の鉄骨造マンションで、築23年。1棟目と違ってたまたまラッキーなことに満室でした。この物件を買ってすぐに会社を辞めました。最初の物件を買って2カ月で独立したことになります。
最後の砦は妻の反対だった
極東船長さん
借金に対する恐怖心はありませんでしたか?
図越寛さん
なくはないですが、不動産を担保にした借金なので、安く買うことでリスクは抑えられるだろうと。マネをされると困りますが、つなぎ資金としてサラ金( カードローンの俗称 )の十一( といち )の利息でお金を借りたこともあります( 売却資金で完済 )。
ただ、妻にはなかなか理解してもらえませんでした。1棟目の時に妻に連帯保証人を頼んだところ、最初は断られました。でも私は本気だったので、「 離婚するか、ハンコを押すか、どちらか選んでくれ 」と今思うと結構きついことを言ってしまいました。
「 こっちには家族を養う決意と覚悟がある。勉強もしたし、失敗もしない。だからわかってくれ 」という思いでした。私の親戚や妻の両親にも事業資金の借金を申し込みましたが、すべて断られました。妻は両親に内緒で最後はハンコを押してくれました。
極東船長さん
奥さんの理解ですね。そこがハードルになる人も多いよね。
図越寛さん
最初だけですが、連帯保証人のハンコのときは徹底的にやりあいましたし、泣きもしました。私は妻と出会って2日目でプロポーズしたくらい、縁がある相手だと思っています。
でも、妻はサラリーマンと結婚したつもりだったのに、その1年半後に借金の連帯保証人になってくれといわれて、ビックリしたでしょうね。今はもちろん理解してくれているはずです( 笑 )。
極東船長さん
オレを信じてくれ、ということだよね。創業時の苦労って、振り返ってみると懐かしいというか、いい思い出じゃないですか? オイラも絶対に成功すると思って始めたけどさ、同時にもしダメでも仕方ないという気持ちもどこかにあるんだよね。結局、ものをいうのは「 胆力 」さ。
買うまでは何を言っても机上の空論だから、相手だってわからない。だから、買った後は何が何でも実績を上げるしかないんだよ。数年間の実績ができるまでは、自分自身をふるいたたせて、やらなきゃいけない。奥さんもあの時、ハンコを押してよかったと今は思っているでしょう。
図越寛さん
そうだと信じています(笑)
編集後記
29才で不動産投資に出会った時の自己資金は夫婦で500万円。それが今や、家賃年収4億7千万円( 建設中物件が竣工した後 )とは、成功に向けて駆け上るスピ―ドが尋常ではありません。もちろん、その影には人の何倍もの努力があったことも、お話からよくわかりました。明日は図越さんのブレイクスルーにつながったという「 売却 」のお話を中心にご紹介します。お楽しみに。
全4回のテーマ
【第1回】8年半で98億円の不動産を買った図越寛さんの成長のロジック
【第2回】ブレイクスルーのきっかけと中古物件をすべて売却した理由
【第3回】札幌と大阪の現在の市況。テナント・民泊業者への一棟貸しという挑戦
【最終回】またゼロから始めるとしても中古一棟RCを選ぶ