今回は、『 公売購入物件、22号物件 』のお話です。
この物件は公売物件で、「 次回の売却予定物件一覧 」の中にあったものを見付けました。見付けた次の日には見に行きました。最寄駅から徒歩5分程、駅はターミナル駅で再開発が掛かっている為、非常に綺麗になっており、注目しているエリアだったためです。
同じエリアに物件を保有しており、エリアの事は何となくわかっていました。物件があるので、駅周辺の賃貸業者さんも知っていますし、業者さんも手配できる、ここなら大丈夫と判断して、入札価格を決める為に動き始めたのは、公売開示される半年くらい前の話です。
それからようやく、公売情報が開示されて、公売入札期間が始まりました。公売物件の場合は、入札期間が始まると直ぐに、公売物件見学会があります。
この見学会のチャンスを逃すと、一切室内などは見る事ができないので、公売入札する際には必ず、時間を無理やり空けてでも見に行くようにしています。
その際には、ワタシだけでわからない事を一緒に確認してもらう為に、工事業者さんも一緒に参加するようにしています。これをお願いできるのは、長年の付き合いがあるからに他なりません。
■ 3LDK×24戸の公団タイプの物件を公売で落札!
室内をざっと見た感覚で、今まで再生して来た物件と何ら変わりはないように思いました。
和室としては綺麗ですが、洋室の部屋が一つもありません。全室総和室。。。。。これでは今の入居者さんは入居してくれません。
古臭い公団タイプのキッチン、取り換え必須です。
室内洗濯機置き場は何とかありました。洗面台は要交換ですね~。
そしてお風呂は当然ながらバランス釜、この築年数では必ずあるバランス釜、毎回頭を悩ませます( 一一)
ぱっと見には、極々普通の公団タイプの物件。3LDKが24室もある大型物件です、丁度この手前に映っているフェンスがくせ者ですww。後で出て来ますのでよく覚えておいて下さい(苦笑)
もともとの外観写真です。見に行った当時はまだ秋でしたね~。
■ まさか! 電気、ガス、水道、すべてのインフラがない!?
さて、事前に業者さんと一緒に見に行ったことで、工事内容の見積も入札時には出揃って、幾らの利回りで回したいか、最低利回りはどれ位か、色々とストレスを掛けながら試算して出た金額で入札をした所、見事落札!
ターミナル駅徒歩5分、敷地面積450坪、3LDK、24戸の物件工事がいよいよ始まります。融資は地銀さんでお願いし、物件価格+改修工事費の総額を出してもらえることになりました。これで準備は万端!と思っていました。
ところが、工事が始まって直ぐに信じられないことが判明しました。何と!この物件にはインフラが一つもなかったのです。電気、ガス、水道、全てのインフラがありません(@_@)
普通の不動産取引なら、あり得ない瑕疵物件です。物件資料にはそんなこと、一言も書かれていませんでした。その事を物件代金支払済みの管轄の担当者へいうと、とんでもない返事が返って来ました。
「 資料には一言も建物が使用できるとは書かれていません 」
マジか!? それなら「 建物は使用できません 」って書いておけよ!
と心で叫んだのはいうまでもありません( ;∀;)
当然、「 土地+建物 」で購入していますので、そんなの調査不足だ、資料に書かれていないのはおかしいと裁判をかければ白黒はっきりするのでしょうが、国を相手に裁判を掛けても、何年かかるかわかりません。
その間の費用負担、金利負担、支払い猶予後の元金支払いの事を考えると、到底裁判を起こす気にはなりませんでした。その後、敷地内を詳しく調べたところ、このような状況になっていました。
ピンクの部分が22号物件の敷地、ブルーの部分がまだ国の敷地です。このピンクとブルーの敷地の間には、真新しいフェンスが立っていました。
①のライン上に給水、②のライン上に排水、③に水道メーター(22号物件用)、④に22号物件を繋げていたであろう電柱が立っていました。
フェンスの基礎を見ていただくとわかるかと思いますが、かなり真新しいデカい基礎が設置されています。つまり、この基礎を作る際に地中を掘って、給水、排水が全て分断。
メーターは隣地のブルーの敷地に残されたままです。電柱からは無残に電気配線を切られていました。敷地をまたいで、電線が越境するからです。
これらを解決させる為には、道路から新しく給水、排水を繋げる為に地中を掘って配管するしかありません。もちろん水道メーターも移設、電柱も新たに敷地内へ立てる必要があります。
ざっとかかる費用を再見積もりしてもらい、給水を新たに引っ張ることで、新規の受水槽が必要な事も判明し、追加工事費はおよそ1千万円に!マジですか~(ノД`)・゜・。
しかしその費用もいくらかは銀行さんが融資追加として出してくれる事となり、何とかホッとして工事をお願いしました。ホント、築古の物件って何が起こるか、フタを開けてみないとわかりません(;´∀`)
■ 半年の工事を経て蘇った物件アフター
工事着工から工事完成まで約半年、ようやく完成した物件がこちらです。
外観はシンプルに塗り分けくらいしかしていません。ベランダに取付けた木は古材で痛みがあるものをわざと利用しています。
外観共有部分で一番費用対効果が大きいなと感じたのがこのエントランスです。普通、公団タイプの物件にオートロックが付いてる物件なんてありませんが、この物件では3カ所ある入口全てにオートロックを設置しました。
外部と内部をわける鉄製の扉は、アイアンで造作してもらった扉です。集合ポストと宅配BOXも取付、エントランス回りは高級感を出す為に石張りにしています。
室内はというと、既存間取の3LDKはほぼそのままですが、一度スケルトン状態まで解体して、そこから新たに間取を作成してもらいました。
既存間取をスケルトンした理由は、断熱材が全く入っていなかったからです。RC物件は高気密ですが、その分湿気に弱く、直ぐに室内が結露してしまいます。必ず断熱材を入れる必要がありました。
キッチンはガスシンクとセパレートのカウンターキッチン。このタイプのキッチンはメーカー物を使用するととんでもなく高額になる為、これらは全て、キッチンメーカーさんと直取引でオリジナル作成してもらったものです。
シャンプードレッサーも好きじゃないので、いつもの洗面台を施主支給。その代わりに、可愛い照明器具を全室取付けています。
もちろん、ユニットバスも新規取付です。
写真を見ていただいたらわかりますが、一つとして同じ部屋のデザインはありません。24室全部、デザインが違います。
3LDKの表層プランを作成する為には、クロス、床の選定、建具の選定、キッチン扉のカラー、ユニットバスのアクセント等々、およそ40種類もの選定が必要となり、40種類×24室分=960種類ものプランを選ぶ必要があります。
ホントにやってもやっても終わりません。カタログはもう見たくないっていうくらい見ました。自分で自分の首を絞めているとしか思えないほど、この時は週末毎に締め切りに追われていました。
既にクロス屋さんが入っているのに、プランの方が終わっていないのです。あと何室、残り何室と、ずっと数えながらやっていましたね~(苦笑)。
■ 部屋ごとに違う表層プランは貼り分けてくれる職人さんのおかげ
ざっと、トイレだけ集めてみました( 笑 )。よくもこれだけ指定したな~と思うのですが、その指定プランを貼分けてくれる職人さんが居てくれてこそ、ウチの物件はでき上がりますので、ホント職人さんには感謝しかありません。
玄関周りの写真です。
部屋の間取によって2パターン程あります。その他は反転間取だけなので、全て同じ間取です。
そして4室だけ、減築して2LDKの部屋にしました。
窓を開けるとLDKと一体になったウッドデッキのインナーバルコニーがあります。優雅に朝食を食べたりするのに活用して欲しいと思い、作りました。
■ 完成から5カ月で無事に満室に
22号物件は本当に難工事の連続でしたし、完成が18号物件のゲストハウス完成と重なっている時期だったので、行ったり来たりも大変でした。しかし、完成から約5カ月後には満室となり、今は何の問題もなく最初の計画通り稼働してくれています。
果てしない山のように見える再生事業案件、1棟丸ごとリノベーションはとてもハードルが高いですが、使われていない遊休建物を生かして使用するという意味では、地域的にも社会的にも意義のある仕事だと思います。
取得から工事、完成から満室に至るまで約丸々1年かかっています。ちょっと想定外な出来事もあり、時間をかけ過ぎだと反省しています。
でもきっと、またこのような物件の案件が飛び込んで来たら、その建物がもう一度使って欲しいという事なのだろうなと思って、やり遂げようと思うでしょう。
■ 神戸で極東船長さんのセミナーを開催します
最後に少しだけ告知させて下さい。健美家コラムでもお馴染み、極東船長さんをお呼びして10月27日( 土 )神戸でセミナーを開催します。まだセミナー席若干残りがありますので、もし宜しければご参加下さい。
関西では滅多にセミナーされてない貴重な機会ですので、多くの皆様に聞いて頂ければと思います。もちろん私も参加致します。宜しくお願い致します(^^♪
https://my.formman.com/form/pc/nFiCQKhvhrXdVzoq/
※申込みが多い場合は抽選となります
本日も最後までありがとうございました。次回もまた、コラムでお会いしましょうね~!