健美家読者の皆様。大家列伝以来の久しぶりの登場、江古田島平八でございます。今回のコラムは失敗告白・・・。
自信満々で不動産投資を行ってきたのでやや不本意ですが( 笑 )、自信と過信は禁物ということを皆様の胸に刻んでいただく為にも、ちょっとした行動の遅れがピンチを招いた私の体験談をシェアしたいと思います。
■ 「 面白い物件 」と紹介された2,500万円のバーベキューハウス
2018年夏。ネットで半年も売れ残り、投資家たちの誰もが目に留めなかったある物件の情報が、なぜか私のところに送られてきました。知り合いの社長さんが、「 面白い物件 」とメールで教えてくれたのです。
リンク先の情報を見ると、埼玉の田舎にある一戸建て、間取りは3DK。価格は2,500万円でした。いつも見ている収益物件サイトでは見たことがありません。自分では絶対に見つけることのない物件でした。
なぜ、社長が私にこのメールを送ったのが、不思議に思いながら物件詳細に進んでみると、そこには、「 2階建てのバーベキュー施設が営業中 」と書いてありました。
場所は川沿いで、物件の敷地を通行しないと水には入れないなんちゃってプライベートリバー状態です。「 前オーナーさんが高齢で引退するために売却したい 」と小さく書き添えられていました。
気になる営業利益は「 場所貸し 」のみで、年間300~400万円。営業は4月~11月の土日祝日のみ。利回りで割り戻すと12~15%くらいで、数字だけ見れば特筆すべき物件でもないのですが、サラリーマン引退後の適度な仕事と現金収入の道筋を模索していた私には、魅力的に映りました。
また、埼玉の山の中、川沿いにあるバーベキュー施設というロケーションも、『 漢心( おとこごころ ) 』をくすぐりました。
早速、前向きに検討することにしたのですが、このときは、一足違いで別の方に購入されてしまいました。すぐに買い付けを入れなかったことを悔やみましたが、後悔先に立たず…。欲しい気持ちが昂ぶっていたので、しばらく引きずることになりました。
その後、個人的なことになりますが、家族がマレーシアに移住したことなどもあり、濁流のように流れる時間の経過の中で、このバーベキューハウスは、少しずつ過去の記憶へと変わっていきました。
■ 1年で700万円も安くなって再販された理由
2019年夏。塾生からの1本のLINEで事態が動き始めました。昨年、購入出来なかったバーベキュー施設付き物件が、何と、値段を下げて再度ネット上に掲載されているというのです。
添付されたリンクで確認すると、価格は2,200万円。しかも、前回は付いていなかった川向の土地も付いてきています。両サイドの、川沿いに降りる道がある場所を押さえているのです。河原に降りる道を独占しているため、プライベートリバー感は更にUPしています。
取り扱い業者さんがお休みだったため、休み明けに連絡すると、驚くべきことに、値段は更に700万円下がり1500万円になっていました。すぐさま購入する旨を伝えて、物件をサイトから落としていただくよう依頼しました。
昨年は2,500万円だったものが1,500万円に。さらに、川向の土地も駐車場用地として100坪ほど増えている。買い逃したと思ったら、一年で安くなり、土地が増えた幸運に飛び上がりました。
しかし、当然のことながら安くなった理由が気になります。聞くと、仲介会社さんは『 詳しい話は現地に来てもらえれば分かります 』と答えました。そんな言い方をされるとドキドキが止まりません。
一体、何があったのだろう?
現地に着いて聞いたのは、予想もしていなかった内容でした。まず、囲炉裏が素敵だった1F部分に案内されました。すると、3か所ある入り口のうち2つが完全に塞がれています。
中にはおびただしい量のスピーカー、外にもたくさん設置されていました。さらに、囲炉裏から出る煙を逃がす換気扇も、全て塞がれていました。
大体、何が行われていたのかは想像がつきましたが、一応確認しました。売却理由は近隣との「 修復不可能レベルのトラブル 」でした。
近くに住居がほとんどないプライベート感満載のロケーションは、それをよしとしたパリピたちの、貸し切りパーティー用に使われていたのです。昼夜関係なくクラブミュージックを爆音で流し、河原でハイテンションで騒ぐパリピたち。
その騒音は次第に離れた場所に住む住人の家にも届くようになり、トラブルが絶えなかったそうです。かくして営業の継続が難しいほど騒動は大きくなり、この物件は、市場に再び出現することになったのです。
隣国の投資家の方からも問い合わせがあったそうですが、前回の売却で、地域の人から白い目で見られそうになっていた地元密着型の仲介さんには「 今度は近隣の方と上手にやってくれる方でないと! 」という強いプレッシャーがかかっていました。
善良を絵にかいたような人間である私は幸い、その点についてはクリアできました。そして、物件の契約は10月2日。決済日は10月9日に決まりました。
■ 決済と保険加入のタイミングがずれた理由
現金決済の為、契約自体はスムーズに行われました。契約日に近隣へのあいさつに行くと、オーナーが変わったことを皆さんが喜んで、初対面の私を大歓迎してくれました。
また、雑談の中で、「 現状は未登記建物であるバーベキュー施設が登記できるかもしれない 」という話を聞きました。この物件がなかなか売れなかったのは、未登記建物があることで融資が付きづらい事も理由のひとつでした。
売却する気はありませんでしたが、登記できるならしておきたいと、土地家屋調査士の方の手配も済ませました。そして迎えた決済日、現地で土地家屋調査士の方と話すと、二~三週間ほどで登記手続きが完了するというお話でした。
このことが、この物件への保険の加入を遅らせました。融資を使った売買時は、通常、購入した日に保険に加入します。現金で購入する際も、私は基本的には決済日から加入するようにしています。
しかし、今回、なぜそう思ったのかは今となっては分からないのですが、「 未登記建物の登記手続きが終わってから保険に加入しよう 」と考えてしまったのです。その時、台風19号の発生は確認されていたにも関わらず…。
この少し前に、関東を中心に甚大な被害があった台風15号で、このエリアは全く被害がなかったことから、のんびり構えていたことは否めない事実です。
■ 台風上陸。購入4日目に無保険で被災…
10月12日はこの物件を購入後、初めての週末でした。大掃除をする予定で仲間を募っていましたが、台風19号接近の報道を見て、中止を決定しました。
遠方から手伝いに来てくれる方や、千葉方面に住んでいる方の安全を考えた措置でした。自分の物件に何かあるかもなどとは全く考えていませんでした。
甘い考えに浸っている私への罰でしょうか。9月12日に関東エリアを直撃した台風19号『 ハギビス 』は、記録的な大雨被害を各地にもたらしました。
雨による増水は、ダムの貯水限界を超えてきていました。夕方から夜にかけて、各地で河川が決壊したニュースが、悲惨な映像と共に報道され始めました。
買ったばかりのバーベキュー物件は、入間川沿いにあります。祈るような気持ちでニュースを見ていると、遂に入間川も決壊のニュースが流れました。
最初の所有者から30年間。一度も自然災害の被害はなかったという話を聞いてはいたものの、物件の安否が気になります。そして・・・、まだ保険をかけていないことを思い出し、心底震えました。
翌日、朝一で物件へ。穏やかな清流のほとりの抜け感のある風景。重厚な囲炉裏が存在感を放っていた室内バーベキュー場。きれいに整備された川沿いの屋外バーベキュー場。
すべてのロケーションが気に入って購入した物件は、無残な姿になっていました。
物件の周りの地形は一変。一階部分は夜中に完全に水没し、囲炉裏がシャッターを破って流出。室内は川砂だらけでキッチン部分も壊滅。外に置いてあったバーベキュー用品はすべて流されていました。
壊れたシャッター部分から、室内に入った時の絶望は言葉では言い表せないものでした。購入4日目。私は『 無保険 』で『 被災 』したのです。
明日の後編へ続く…