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坪50万円台の木造賃貸、築13年でも相場より1.5万高く貸す秘訣【建築家と建てる賃貸住宅】

収益物件購入・売却/建築家の賃貸住宅 ニュース

2024/05/10 配信

今回は賃貸住宅の建築費に着目したい。ご存じの通り、ここ数年で建築費が上がっている。国土交通省の調査によると東京における2022年時点での賃貸アパートの建築費水準は木造で66.5万円/坪、鉄骨造プレハブ工法で105.3万円/坪となっている。

そこで目を向けたいのが坪50万円台で競争力を高めた木造2階建ての賃貸住宅だ。相場より1.5万円高い家賃で満室が続いている。手掛けている菅家建築計画工房の代表で一級建築士の菅家 幹氏に話を聞いた。

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三角形の屋根が2つ連なる、シンプルな形状の賃貸住宅

コストを抑えつつも、付加価値を高めることを意識する

狛江市の駅から14分の場所にある、白いシンプルなデザインの賃貸住宅。ワンルームと1LDKが混合する全8戸で、築13年経つ今も満室だ。狛江市のワンルームの家賃相場6.8万円(ライフルホームズ調べ)に対して、直近で1階の部屋が8.4万と相場より1.5万円高い家賃で貸せている。

実はこの計画、敷地の一部が将来的に道路となる「都市計画道路」の計画地となっていた。オーナーさんがハウスメーカーに相談をした際、賃貸住宅を建てても数年後に一部を壊すことになる計画を提案されたそうだ。

困ったオーナーさんから相談を受けたのが、狭い敷地や複雑な条件がある依頼を得意とする菅家氏の事務所である。

「ハウスメーカーによる提案は収益を最大化するため、大きな建物を建てて、都市計画道路ができるときに一部を壊すような計画でした。建物の一部を壊すのは大変なことです。収益最大化の考えはそのままに別のいい方法がないか考えたのがバルコニーをあきらめ、室内の面積を最大に取った現在のプランです」

そもそも依頼主が重視していたのは「建築コストを抑えることと付加価値を高めること」の2つ。どちらも賃貸住宅を建てる際の課題となる。

「コストは落とせばいいというわけではなく、かといってデザインが突出したデザイナーズ物件であればいいというではなく、両者のバランスが難しいところです」

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バルコニーがないが、洗濯物は室内物干しで対応。エアコンの室外機は屋根のなかに隠している

光で陰影をつけ、家のなかに「風景」を創り出す

では、いかにしてコストを抑えて魅力を持たせるのか? 菅家氏は、部屋のなかに「気持ちがいい空間を創ること」を意識している。

「直近で我々が手掛けた一般住宅では、隣地が公園で、景色がよく、家のなかから公園の風景を楽しめるように設計しました。賃貸住宅ではできることに制限があり、すべての住戸を魅力的にしようとするのは難しいことです。

今回の計画では2階のステータスを上げるように意識しました。2階の住戸は屋根勾配を活かして天井を高くし、自然光の入り具合を工夫することで陰影をつけ、独自の心地よい『風景』を創り出しました」

内装で使用しているのは量産品のクロスで、外壁は一番安いタイプを使用しているそうだ。それでも建築家ならではのセンスで、独特のほかにはない雰囲気に仕上げている。

流行りの家具をおいて、写真を工夫して素敵な部屋に見せるよりも写真のように、柱や構造体の位置や設計を工夫することで、コストを抑えつつも、部屋のなかに「風景」をつくりオリジナリティのある空間を創り出すことができる。

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自然光を採り入れ、部屋のなかに陰影をつけ、木漏れ日をつくる

設備面では、水廻り設備を「1つの風景を作る装置」として重視し、色使いに配慮する。

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天井高を活かした1LDKの室内。木目調のキッチンを採用したが、全て木目にすると重たい印象になるため側面は白に。「ちょっとした色使いのテクニック」がポイントに

こうした工夫で、2011年時点で建築費を坪57~58万円台に抑えることができた。

「昨今では政府の施策で賃貸住宅の省エネ性能を高める動きがあり、より建築費がかかるように変化しています。さらには資材や人件費の高騰で、当時に比べて建築費は全体で1.4倍ぐらい高くなりました。

ただし安くできるノウハウはあるので、ローコストの住宅メーカー同等の価格に少しプラスアルファした金額で仕上げることが可能です。建築費が坪60万でも坪80万円に値するレベルにデザインや設計の力でクオリティを上げることができます。それが我々の強みです」

築40年のアパートを1室だけ再生、4年で回収

ほかにも菅家氏の手掛けた賃貸住宅で参考にしていただきたいものがある。築40年のアパートで空室になっていた1室だけをリノベーションし、4年でかかったコストを回収させた事例である。

「当初はクロスを貼り変えるだけの想定でしたが、いざ天井を開けてみたら梁や柱が思いのほか魅力的で、梁や柱を見せるような内装にしました。土壁の部分はきれいに塗装をしてデザイン事務所に勤めていた妻がインテリアの提案をし、キッチンを造作するなど水廻りを刷新したところ、この空間を面白がってくれたデザイナーさんで入居が決まりました」

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築40年のアパートの1室を改装。1LDKの空間に天井高を利用して、ロフトを設けている
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深いグリーンのキッチンを造作。水廻りは「風景をつくる装置」として重視する

このように1室だけお金をかけてテコ入れすることで、古いアパートでもうまく入居者が入る可能性がある。

上記のようなリノベーションを行う場合、40平米の住戸で水廻りも刷新することを想定し500~700万円かけて、4~5年で回収するイメージだ。

菅家氏は狭い敷地や複雑な条件がある依頼にも柔軟に対応する。

「使えるモノは最大限に活かして、ほかのハウスメーカーや建築家ができないようなことを考え出し、収益を最大化するよう心掛けています。採算の計算や相続税対策の相談にも対応しています。困ったときにはぜひ頼りにしてください」

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菅家 幹氏 工学院大学卒業、工学院大学大学院 修了。矢板久明建築設計研究所、小沢明建築研究所を経て2002年より菅家建築計画工房 代表
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協力:デザイン会社に勤めていて夫に的確な提案をした妻の村上(菅家)和子氏

●取材協力:建築家ポータルサイト『KLASIC』 
相談できる「建築家」が見つかる。建てたい「家のイメージ」がみつかる建築家ポータルサイト

健美家編集部(協力:高橋洋子(たかはしようこ))

高橋洋子

https://yo-coo.wixsite.com/home

■ 主な経歴

暮らしのジャーナリスト。ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、情報誌などの編集を経てライターに。価値0円と査定された空き家をリノベーションし、安くマイホームを購入した経験から、おトクなマネー情報の研究に目覚め、FP資格を取得。住宅、マネー関連の執筆活動を行う。

■ 主な著書

  • 『家を買う前に考えたい! リノベーション』(すばる舎)
  • 『100万円からの空き家投資術』(WAVE出版)
  • 『最新保険業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』(秀和システム)など

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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