今回は不動産賃貸業(不動産投資)、宿泊業どちらもやってみた私が、2つの事業を色々な角度から比較してみたいと思います。
参考までに現在の事業規模は以下です。
◆不動産賃貸業
2014年 1棟目購入、以降コツコツと購入、売却を続け通算10棟購入。現在4棟19室運営中。家賃年収は1,400万
◆宿泊業(自己所有物件ではなく転貸)
2023年春から都内の転貸物件で旅館業(365日運営可能)2軒運営開始、現在旅館業4軒運営中。年間売上予想は2,700万
2つの事業の比較を表にしたものがこちらです。
内容を詳しく説明します。
①融資
不動産賃貸業、不動産投資といえば融資。特に数千万円のアパートやマンションを購入する際は、ほとんどの方が融資を利用するのではないかと思います。通常はその不動産を担保にしてお金を借りることになります。
一方、転貸で行う宿泊業に関しては、最初から融資を受けることは難しいかもしれません。自己資金で立ち上げ、軌道に乗せてから、運転資金として無担保での借り入れをすることになると思います。
融資の使いやすさとしては不動産投資に軍配が上がります。
②自己資金
不動産投資をする場合、自己資金は必須となります。購入の際の頭金、諸費用のほかに、借り入れをして運営する以上、急な退去や修繕による出費で返済ができないといけないので、常にある程度の現金を持っておく必要があります。
私は最低でも月々の返済の半年分くらいは常に口座に入れておくことにしています。
一方、宿泊業に関しても自己資金は必要となりますが、30平米程度の1部屋を借りて開業するための資金は200万円、運転資金として100万円、合計300万円くらいから始めることができます。
不動産投資に比べると金額としては小さいです。またインバウンド向けの予約サイトとして有名なAirbnbは支払いまでの期間が非常に短く、ゲストのチェックインの翌日には送金され、数日のうちに振り込まれます。
小さな事業者にとっては非常に心強いパートナーです。自己資金に関しては宿泊業のほうが小さく始めることができます。
③利回り&⑤安定性
私が現在保有している不動産物件の平均利回りは約10%ですが、宿泊業をあえて同じ尺度で計算すると、利回りは200%前後となります。
この2つを同じ尺度で比べること自体意味がないかもしれませんが、投下資本に対する利回りはかなり高いことが分かります。
ただ皆さんも記憶に新しいと思いますが、コロナ禍で宿泊業は大変な打撃を受けました。それに対して不動産賃貸業はほぼ無風でした。
不動産投資に関しては5年以上の長期スパンで考えていきますが、宿泊業は半年から1年の短いスパンで見ていく必要があります。
不動産賃貸業は、利回りという点では低く見えますが、安定性の面では情勢に左右されることが少ないです。
一方宿泊業は、投下資本の回収という点で見ると、かなり短い期間で回収できますが、情勢に左右されるため安定性はありません。
④申請、許可
不動産賃貸業は、購入時に宅建士、司法書士にお世話になりますが、特に賃貸業を営む上では用途地域での制限はそこまでなく、行政の許可や申請は通常必要ありません(消防設備に関しては点検の義務があります)。
一方宿泊業に関しては、住宅宿泊事業、いわゆる民泊であっても、旅館業、簡易宿所などの施設であったとしても、消防設備や保健所での検査、許可は必須となります。
特に旅館業法に則って行う宿泊業は不動産賃貸業とは違い、用途地域によって開業できるか否かが決まっており、消防設備も規模や階数によって設置する義務があります。
不動産賃貸業も宿泊業も他人に場所を貸すという点では同じですが、不特定多数の人が出入りする宿泊業の法令は、賃貸業とは似て非なるものです。
物件の探し方、向いている地域に関しても、不動産賃貸業と宿泊業では似ているようで違います。自分が長期間住みたい静かな地域と、短期間滞在する便利な場所は違うのです。
⑥自分の稼働
不動産賃貸業は入居者さんとあえて絡みたい(?)自主管理大家さんを除き、管理会社にお任せしていれば、入居している間は自分が対応することはほとんどありません。
設備の故障や、何か起こったとしても対応自体をお任せすることができます。もちろんその分費用が掛かりますが、所有している事によるストレスはほとんどありません。
宿泊業に関しても、運営代行会社を入れていれば基本自分が対応することはなく、運営することができます。
私は宿泊業というものを一度自分でやってみたかったのと、単純に面白そうだと思ったので、清掃とメール対応の一部はお任せしていますが、リスティングの作成、緊急時の対応など他の部分はすべて自分でやっています。
最初は言葉が通じなかったらどうしようと思っていましたが、何とかなることが分かったので、今はゲストとも積極的に会うようにしています。
約一年運営してみてゲストがなるべく困らない(=自分も困らない)運営の仕方や、どうすればゲストに喜んでもらえるのか、またクレームにならない連絡の仕方などがある程度理解できたので、徐々に自分が入らなくても回る体制を整えているところです。
不動産賃貸業のゆるぎない安定性と、宿泊業の高い収益性。この2つを組み合わせていくことで、安定性も確保しつつ収益を得ていくことができるということが分かりました。将来的には自分の持ち物件で宿泊業をやってみたいと思っています。