ラニーニャ現象の影響で、気象庁より今年も暑い夏になるという予想が発表されている。そもそもラニーニャ現象だけではなく、地球温暖化により気温上昇が常態化しているため、酷暑の夏が当たり前のようになってしまった。
在宅ワーカーが増えている昨今、賃貸住宅の居室設備におけるエアコンの存在は欠かせないものとなった。
設備トラブル、
第一位はエアコン
春の心地よい季節になったのも束の間。年や地域によっても異なるが、おおよそ5月から6月にかけて梅雨の季節が待ち受けている。気温だけでなく湿度も上がる頃、入居者にとっての室内でのマストアイテムは「エアコン」だ。
一般的に、入居者からの不動産会社への連絡で、全体の4割程度が「設備に関する困りごと」である。その中でも、梅雨入りの時期はエアコンの使い始めの時期にあたるため、一年で最もエアコンに関するトラブルや問い合わせの連絡が集中する。
エアコンを利用する時期は、冷房は5月から10月(6ヶ月間)、暖房は12月から3月(4ヶ月間)であるが、暖房機能は利用されない場合もあるため、冷房しか使わない人にとっては、半年ぶりにエアコンを作動をすることになる。
半年も利用していないと、無用なトラブルや相談の連絡が増えるものである。たとえば、「エアコンが作動しない」という連絡が入ったとしても、蓋を開けてみれば、故障をしていないということがよくある。
話を聞けば「使わない期間が長いから、コンセントからプラグを外していた」という人や、単純に「リモコンの電池が切れていただけ」というような、入居者がうっかりしていただけのことが多々あるのだ。
もちろん、完全にエアコン本体が故障をしていることもあるが、その場合は少し厄介だ。故障が、使い始めのこの時期に集中すれば、修理と言っても業者やメーカーがすぐに動けない。
その結果、入居者は、暑い中何日も修理されずに耐えてもらわなくてはならない。
修理の放置で、
賃料減額に
2020年4月に民法が改正されたことは、まだ記憶に新しいのではないだろうか。
改正後、貸室・設備等の滅失によって通常の居住ができなくなった場合、賃借人に責任がある場合を除き、賃料はその滅失部分の割合に応じて当然に減額されることになった。
従来は「減額請求できる」とされていたものが、改正民法では「減額される」と家主側が負担すべきとなった。
「貸室・設備の不具合による賃料減額ガイドライン」によると、たとえばエアコンが作動しない場合、賃料減額割合は最大で5000円となると記されている。
状況 | 賃料減額割合 | 免責日数 |
トイレが使えない | 20% | 1日 |
風呂が使えない | 10% | 3日 |
エアコンが作動しない | 5000円(1ヶ月あたり) | 3日 |
テレビ等通信設備が使えない | 10% | 3日 |
雨漏りによる利用制限 | 5%~50% | 7日 |
(出典:公益財団法人日本賃貸住宅管理協会)
具体的には20日間作動しなかった場合、次の計算となり、約2,830円を賃料減額されることになる。
5,000円×(20日(故障期間)ー3日(免責))÷30日(月)≒2,830円
通常期であれば、故障をしたらすぐに業者に依頼すれば良いのだが、世界的な半導体不足で手に入りにくいのはエアコンに関しても同様。
そこに、急激な暑さによるエアコン需要が一気に押し上げられれば、さらに状態は悪化する。
昨年、エアコンが故障して修理・交換の待機者が発生し、その際、2週間程度エアコンを使えなかった人が、全体の約3割にもなったのだそう。(大手メーカー調べ)
いまだに半導体不足は継続しているため、今年も同様のことが想定される。
賃料減額だけなら「たった数千円のこと」と割り切れるのかもしれないが、すぐに修理がされないことで、入居者が不満を感じて退去に至るリスクも考えられる。
エアコンはすぐ手に入らないという前提で前もって準備をしたい。特に、ここ数年で故障をしていたり、既に十数年以上を超えているようなエアコンに関しては、事前の準備をしておいた方が無難だ。
むしろ金額的には需要が増える前に処置をしておけば、安く済む可能性も高いからだ。
新品に交換となればもちろん費用はかかるが、新しいエアコンで快適な室内空間となれば、それがきっかけで長期入居をして頂ける可能性も出てくる。
事前の対策で、賃貸経営のトラブルを未然に防ぐと同時に、解約の抑止にもつなげたい。
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執筆:
(いまいもとつぐ)