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賃貸物件での事故処理を学ぶ2【賃貸経営のための保険講座】

賃貸経営/保険 ニュース

2024/05/08 配信

賃貸物件が被害を受ける事故は、自然災害による建物の損傷事故だけではない。車両の衝突による破損、盗難目的やいたずらによる破損・汚損、そして入居者の過失による失火や破損など、第三者行為による被害事故も少なくはない。

加害者が存在するため、その対応は自然災害による被害事故とは大きく異なり、当事者間でトラブルに発展することも考えられる。このような事故の場合、どのように解決すればトラブルを回避できるのか。火災保険の活用方法を学んでおく必要があるだろう。

・火災保険は加害者がいる事故でも損害を肩代わりできる

火災の類焼(もらい火)による損害は、日本の法律では失火元に賠償請求ができない(=失火の責任に関する法律 但し、重大な過失がある場合を除く)。この場合、被った損害は自らの火災保険から補償を受けることになる。

一方、車両の衝突や、入居者の過失によって建物が損害を受けたような「第三者行為」による事故の場合には、加害者に対して損害賠償請求をしなければならない。

加害車両が自動車保険(対物賠償)を契約していれば、保険会社が加害者に代わって示談交渉をするので、家主が直接加害者とコンタクトをとって交渉する必要はない。

ところが、入居者の家財保険に付帯された借家人賠償責任特約や個人賠償責任特約では、原則保険会社、代理店とも保険約款および法律上、示談の代行はできないことになっている(弁護士法違反=非弁行為に該当)。

つまり、賠償金の請求については、家主自らが加害者に直接交渉をしなければならないのだ。これにはとても煩雑で厄介な手続きが伴い、当事者同士が相対することでトラブルになりやすいのだ。

それではこのようなケースでは、どのように事故処理を進めていけばよいのか。総合補償型の火災保険には、このような被害事故の場合でも火災の類焼による損害と同様、受けた損害を肩代わりして補償してもらえる機能がある(家賃損失などの利益損害、間接損害を除く)。

火災保険はいわば「もの保険」であり、家主の財産である賃貸物件は包括的に補償される権利を有している。よって加害者の有無を問わず、損害は補償されるのだ。

そして肩代わりした損害は、債権者である保険会社に帰属されるので、加害者に対して保険会社が代位求償する。よって家主は賠償金の交渉や示談などの繁雑な手続き業務から解放されるのだ。

しかもこのように火災保険金の支払を受けても、自動車保険のように保険料がアップすることはないので、安心して火災保険を利用することができる。加害者との無用なトラブルを回避するためにも、積極的に活用すべきなのだ。

代位求償

・入居者に対しては代位求償権を行使しない

入居者が加害者であった場合、火災保険に損害を肩代わりしてもらっても、その後入居者が保険会社に債権の取り立てにあってしまったら、結局は入居者との間にトラブルを抱えてしまうかもしれない。

こんな場合、保険約款に「代位求償権不行使条項」が定められていれば、賃貸借契約上の借家人(入居者)に対して保険会社は保険代位求償権を行使せず、請求を放棄することができる。

代位求償権を行使することによって、保険契約者である家主に不利益が生じるという理由で「泣き寝入り」してくれるのだ。これにより、代位求償によって入居者が窮地に陥ることを避けることができるので、安心して「被害者請求」ができる。

・被害者請求のメリットはほかにも

通行車両や入居者などの第三者が加害者である場合、法律上の賠償責任額は「時価」を基準に算定される。この基準によって賠償金を支払うのは自動車保険の対物賠償も、入居者の借家人賠償責任特約も同じなので、必ずしも被った損害額の全額が賠償されるとは限らない。

特に築年数や入居年数が長い物件では、相応の減価償却が進んでいるため、時価と原状回復費用との間に差が生じることもあるのだ。

このような場合でも、火災保険で損害を肩代わりすれば、損害額は「再調達価額」で算定されるため、減価償却費を減額されることはない。

建物火災保険(再調達価額) ≧ 賠償責任保険(時価額)

また、契約内容によっては同時に「臨時費用保険金」が10~30%上乗せされて支払われるため、加害者から時価額で賠償を受けるよりかなり有利になる。

建物の損害認定額の違い

・加害者不明の被害事故は警察への被害届を

建物および同一敷地内の付属施設・設備に対して、何者かがいたずら、落書き、破壊行為、当て逃げなどをしたことによって破損・汚損された場合には、被害の大きさに拘わらず管轄の警察署に被害届を提出するのが賢明だ。第三者被害の事実を証明することで、火災保険の鑑定人調査のスピードアップを図ることができるからだ。

また、警察に警戒を強化してもらうことが抑止効果となり、繰り返し被害に遭う可能性も低下するはずだ。届出は管理会社が代行することも可能なので、必ず実施するべきだろう。

また、火災保険商品によっては、犯罪行為による損害が発生した場合に「防犯対策費用」を支払う特約(自動付帯の場合あり)もあり、再発防止のために要した建物の改造費用や防犯機器等の設置費用、ドアキーが盗難に遭った場合の交換費用などが補償されるので、火災保険の補償内容はよく確認しておくべきだろう。

執筆:斎藤 慎治(さいとうしんじ)

斎藤 慎治

■ 主な経歴

保険ヴィレッジ株式会社 代表取締役
大家さん専門保険コーディネーター であり、自らが大家でもある(都内を中心にアパート、マンション、戸建て、事務所、店舗などの賃貸物件を所有)。
大手損害保険会社を退社後、保険代理店を創業 。その後、東京都豊島区東池袋に「保険ヴィレッジ」設立、 代表取締役に就任

平成 22 年より「大家さん専門保険コーディネーター」としてのコンサル事業を本格的に開始 。
大家さん向け保険コンサル、セミナー、執筆などを数多く手掛ける。自称「保険約款オタク」。

自らも大家として現在も賃貸事業を拡大中 「大家さん目線の保険研究」をモットーに、大家さん支援の保険分野に特化した活動を展開中 。 東京都北区出身 。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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