管理会社やオーナーが全く知らない間に、物件の空室で犯罪行為が行われていることがある。スキミングやフィッシング詐欺などで得たクレジットカード情報を不正利用し、通信販売を利用して物品を購入し、荷物の受け取り場所を、空室に設定しているのである。
配達時間を指定して、その時間だけ物件の室内に侵入して待機。あたかも入居者を装って、荷物を受け取るというやり方だ。
そもそもなぜ、空室を使ってこのような事件が起こるのか。事件のカギは、空室の鍵管理の方法と、その抜け穴を利用してのものだ。
◾️「現地キーボックス」での空室管理が、不正利用を狙われる
空室は多くの場合、「現地キーボックス」といって、案内の手間を省くように物件の現地に設置されるケースがほとんどだ。
以前は管理会社や、物件最寄りの不動産会社で預かってもらうなどのこともあったが、最近ではほとんど見かけなくなった。以前に増して、空室も増えて鍵の管理も昔に比べて手間がかかる。
何より、内見の手間を考えると「現地キーボックス」が、物件を斡旋する仲介会社からしてみるとスムーズだし、管理会社も手間が減る。案内のルートから外れたところに鍵があるとなれば、「案内をし難い物件」となり、仲介業者から嫌がられてしまい、成約を見込めなくなってしまう。
あってはならないが、もしも、このような不動産特有の事情を知っている人が、犯罪者に情報を渡せば、事件は容易に成立してしまう。
物件の空き確認を通じて空室情報を知り、内見を装ってキーボックスの開錠方法を入手し、空室を不正利用して物品を受け取ることができてしまうのだ。
◾️特定の暗証番号はさらに狙われやすい
また、部屋ごとにキーボックスの番号が違う場合もあるが、管理会社によっては全ての空室を、いくつかの共通の番号に設定していることもある。
たとえば、A管理会社のキーボックスは「1234」または「5678」など、どちらかのパターンで解除できることがわかっていれば、空室を特定できれば確認することなく開錠できてしまう。
そうすれば、いくら内見の管理をしていても「いつ」「誰が」内見したのか、足がつかなくなる。
管理会社は手間を減らすためそうしているのではなく、仲介業者、修繕業者など、不特定多数の人が物件に出入りする以上、管理上そうする方が効率が良いためだ。
◾️「置き配」が標準化されれば、更にリスクが増大
さらに、つい最近、業界最大手の宅配業者が「置き配」を標準化し始めた。これを悪用すれば、今までよりも、さらに接点なくして物品を受け取ることができるようになるため、今後このような事件がさらに増える可能性がある。
このような通信販売だけでなく、海外からの麻薬の受け取りのために空室が利用された例などもあるという。オーナーも管理会社も全く知らない間に、警察から連絡が入り、初めて事件が発覚することが想定される。
◾️不正利用を未然に防ぐ方法
これらを完全に防ぐことは難しいが、いくつかの再発防止策が考えられる。
・防犯カメラの設置(空室を不正に利用されないための抑止、証拠を抑える)
・オートロックの設置(空室を不正に利用されないための抑止)
・スマートロックの設置でログ管理(「いつ」「誰が」内見したのか、ログの管理)
もちろん、上記で全てを抑止できるとは限らないが、利用される可能性は格段に減るはずだ。オートロックや防犯カメラが設置されていないと、再び同じ物件が狙われるだけでなく、証拠が得られないと犯人を特定することも難しくなる。
物流に関しては、今後さらに効率化される部分も増え、利用者からすれば便利に感じることもあるだろう。
一方、地域によっては空室物件が増えるほど、犯罪の温床となる可能性があることをしっかりと認識しておくべきだろう。
執筆:
(いまいもとつぐ)