車を事業で使用していれば、経費に計上できることは問題ないかと思います。しかし、5,000万円もの高級車を経費にできるのでしょうか?
フェラーリなどの高級車は、高所得者のステータスとみられる傾向があるため、一度はその所有を憧れる方もいると思います。
これが経費で購入できればよいに決まっています。
高級車が経費にできるかどうかについて、間違った情報も多いと感じています。例えば、4ドアならいいけど2ドアの車は経費にならない、などです。
最新判例を基に、経費になるかどうかを徹底検証してみます。
1.減価償却の対象となるか?
時の経過等によってその価値が減っていく資産については、減価償却の対象になります。
一方、土地や骨とう品などのように時の経過により価値が減少しない資産は、減価償却資産ではありません。
ちなみに、書画、骨とうに該当するかどうかが明らかでない美術品等でその取得価額が1点20万円(絵画にあっては、号2万円)未満であるものについては、減価償却資産として取り扱うことができます。
2018年、「カレーハウスCoCo壱番屋」の創業者が取締役を務める資産管理会社の税務調査において、バイオリンの最高峰といわれる『ストラディバリウス』を減価償却していたことが否認された事例がありました。
その否認された理由は、「時の経過によりその価値の減少しない」美術品や骨とう品に分類されるものだからです。
同様に「時の経過によりその価値の減少しない」ものとして希少性の高いフェラーリが該当するかついて、争われた事例があります(令和5年3月9日東京地裁判決)。
この事例は、減価償却をしなかったフェラーリF50などの車両を売却し、購入金額を取得費として売却利益を申告していましたが、減価償却による価値の減少を考慮した取得費(購入金額-減価償却相当額)で申告することが相当と判断されたものです。
●各車両名の購入金額と売却金額
その理由としては次の通りです。
- 自動車である以上、機能の劣化が一切発生しないとか、使用によってむしろ機能が向上するといった事態が生じ得ないことは、社会通念上明らかである
- 骨とう品に該当するかの解釈として、日本標準商品分類上「骨とう」とは、その制作後100年以上を経過したものを指すとされている。製造から18年しか経過していないのであるから、いわゆる「骨とう」といえるほどの期間にわたり高い価値を維持しているとは言えない
- 希少性があることによる価格の高騰はあったとしても、それは投機の対象と見られるようになった平成25年頃からのもの(オークションバブル)。かかるバブル的な価格が必ずしも長年にわたり維持されないことがあるのは公知の事実
今後の価格推移については未だ不確定な面もあるといわざるを得ません。
●ストラディバリウスとフェラーリの減価償却の比較
各フェラーリの購入金額と売却金額を見ると、1つは倍以上の価格で売却できていますが、他のものは、1割くらいの値上がりにとどまっていたり、半値以下に値下がっていたりします。
金額だけを見ると、確実に値上がるような「骨とう品」と言えないことがわかります。
この事例では、購入から売却まで10年以上経過していることから、減価償却によって簿価(未償却残高)がほぼなく、取得費は、「売却金額の5%」で計算されることになります。
減価償却費を経費にしていなかったようですが、いまさら事業で使用していたと主張するのも難しいですし、過去の減価償却を計上し忘れていたと申告を修正(更正の請求)しようにも、その期間は5年前までのため、すでに償却が終わっているため修正もできない状態です。
2.経費にできるか?
減価償却の対象になるかどうかと、経費になるかどうかは別問題です。
平成7年10月12日裁決において、フェラーリが損金になるかどうか税務署と争ったという事例があります。
こちらのフェラーリは、平成3年7月に2,700万円で購入しています。
税務署側は、一般社会常識から見ても個人的趣味の範囲内のもので損金にならないと主張しましたが、結局、フェラーリが損金算入できるという納税者の主張が通りました。
そこでの判断のポイントは下記の通りでした。
- 運行記録はないものの、交通費や通勤手当が支給されていないことや走行距離などから通勤や支店を巡回するために使用されたことが推認されること
- 他に外国車3台を個人的に所有しており、それは会社の減価償却資産には計上していないこと
- 個人的趣味で選定された外国製スポーツカータイプの乗用車であるとしても、事業の用に使用されていることが推認できる以上は資産として計上することを不相当とする理由は認められないこと
スポーツカータイプの車両であっても、事業で使っていれば経費になることがわかります。
3.まとめ
5,000万円のフェラーリであっても、減価償却の対象になると考えられます。ただし、その減価償却が経費として認められるかどうかは、事業で使用しているかどうか次第です。
本当に事業に使っているのか、高額の車である必要があるのかは厳しく見られることになります。
もし経費にする場合には、その車でなければならない必要性や運行記録などを証拠として残すようにしましょう。
私のYouTubeチャンネル「大家さんの知恵袋」でも、「フェラーリが経費になるかどうか」について動画で解説していますので、こちらもあわせてご覧ください。
https://youtu.be/XcvJSWxhArs?si=RiGK0xmfGMBHEzxH
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