2024年3月16日、福井県民待望の北陸新幹線が遂に延伸開業した。
JR西日本の計画では、当初2022年度末の開業が予定されていたが、石川・福井の県境にある「加賀トンネル」のひび割れ工事による工期延長や、資材価格高騰による2880億円もの追加建設費など様々な課題が山積となり、2年遅れての開業となった。建設費の膨張については地元自治体が一部を負担。一日千秋の想いで迎えた記念すべき新幹線延伸だ。
今回の取材では、その終着駅である『敦賀』を訪れた。
12階建てビルの高さに相当、全長200m、国内最長の新幹線巨大駅
「敦賀はまだ何もないからねぇ・・・」
これは地元福井の方との雑談中に発せられた言葉だが、実際に敦賀駅前に降り立ってみると、その言葉の意味をようやく理解した。
全国どこの新幹線駅でも、街の賑わいは本来の繁華街である在来線側にある。この美しくのどかな風景が変わっていくのは少々惜しい気もするが、「やまなみ口」も他駅と同様に、今後数年間で駅前風景が大きく様変わりしていくのだろう。
アーケード商店街が続く在来線側まちなみ口
敦賀駅周辺を取材して感じたのは、地元の方がおっしゃる通り“今のところは”まだ駅前の賑わいにつながる誘客施設が「何もない」状態にあるということ。
そのため敦賀市では、新幹線開業を地域活性の起爆剤とすべく「まちなか創業等促進支援事業」を実施。駅前の各商店街をはじめとする中心市街地を重点地域に定め、小売、不動産賃貸・管理、飲食、宿泊、福祉サービスなどの新事業の開業や店舗展開を行う場合に補助率2分の1(限度額100万円)の補助金を給付している。
また、官民連携で誘客施設の誘致を促す「まちづくり魅力UP応援補助金」では、店舗の改修・新築を行う場合に補助率3分の2(限度額最大2000万円)を補助。こうした行政の手厚いサポートも投機へとつながり、今後の敦賀駅周辺の賑わいづくりを促進することになりそうだ。
全国から視察が絶えない公設書店「ちえなみき」
そんな敦賀駅前の変化の兆しとしていま注目を集めているのが、まちなみ口駅前に開業した「ちえなみき」だ。
敦賀市と丸善雄松堂・編集工学研究所がタッグを組んで運営する知育啓発施設で、カフェや子育て施設を併設した公設書店は「お洒落で楽しい」と評判に。2022年9月の開業からわずか3カ月で利用者数は10万人を超え、全国の自治体関係者が連日のように視察に訪れているという。
“暫定”終着駅の敦賀は北陸・関西・東海のハブ的ポジションが強みに
なお、JR西日本の計画によると、北陸新幹線は今後『敦賀』から『京都』を経由して『新大阪』まで延伸予定。南海トラフなど大規模災害の発災時には、経済大動脈・東海道新幹線の代替ルートを担うことになる。
しかし、地域住民の調整・ルートの見直し・環境評価の遅れ等を受けて、新大阪延伸計画の具体的な進捗はまだ明らかになっていないため、敦賀駅の「北陸新幹線“暫定”終着駅」としての役割は当面続くことになりそうだ。
もともと『敦賀』はJR西日本のターミナル駅のひとつであり、北陸・関西・東海の鉄道交通網をつなぐハブ的なポジションにある。
この立地ポテンシャルに加え、「新幹線の終着駅」としての知名度を獲得したことでこれからどのように開発スピードが加速していくのか──敦賀駅の進化は、いまスタート地点に立ったばかりだ。
健美家編集部