県内最大規模のアリーナ施設を建設
米子市は鳥取県西部に位置するまちで、南東に中国地方最高峰の大山、北に日本海、西に中海を有する、自然環境に恵まれた地域だ。隣接する松江、泉、安来の各都市圏とともに雲伯地方に中海・宍道湖・大山圏域を形成している。
米子空港をはじめ鉄道はJR西日本の山陰本線、伯備線、境線が乗入れ、山陰自動車道や米子自動車道も走るなど交通の利便性はよく、古くから地域の交通結節点・宿泊拠点、人が行き交う山陰の商都として栄えてきた。
昭和後期に人口は14万人を超え、2015年には15万人近くまで増えたが、これをピークに減少に転じ、直近では約14.4万人が暮らしている。
そんな米子市と鳥取県は現在、県内最大規模の体育館「米子アリーナ」の整備を進めている。計画地は山陰本線の東山公園駅の隣接地である東山公園内。老朽化した市民体育館を建て替える形で建設され、完成後は市内にある県立米子産業体育館と市民武道館は廃止され、両施設の機能をアリーナに集約する。
事業スキームは、民間事業者が施設を整備したうえで完成直後に県と市に所有権を移転し、民間事業者が維持管理・運営を行うBTO方式によるPFI事業(民間の資金と経営能力・技術力を活用した公共事業)だ。
今年2月には米子市に拠点を構える総合建設会社の美保テクノスを代表企業とする11社(そのうち5社が県内企業)による事業者グループが優先交渉者に選ばれた。
グループの提案によると、新施設は2階建てで床面積は1万3380㎡、バスケットコートが3面とれるメインアリーナの収容人数は4000人超と県内最大規模。サブアリーナや武道館、トレーニング施設も備える。男子バスケットボールのBリーグなどのプロスポーツ、コンサートなどの利用にも対応する。
施設北側には広場も設け公園機能を強化。施設の床高を進水想定以上とすることで防災拠点としても活用される。バリアフリーやユニバーサルデザイン、ZEB Ready取得を目指すなど環境にも配慮していることも特徴だ。
事業は今年4月から始まり、2027年4月1日までに米子アリーナの供用を目指す。同事業は単に体育館を更新するだけでではなく、既存施設を集約することで運動施設の運営が効率化される。地域住民にとっての利便性も高まるだろう。
プロスポーツだけではなく音楽イベントなどにも利用できるので、集客による経済活性化にも期待が持てる。近年は全国各地で同様の取り組みが進められているが、鳥取県と米子市もトレンドをキャッチアップした格好だ。
2023年には共同で庁舎整備を実施
鳥取県と米子市は共同で庁舎の整備も行っていて、2023年10月より供用が始まっている。
場所は米子駅から徒歩10分ほどにある鳥取県西部総合事務所内にある、鉄骨3階建ての施設だ。1階には鳥取県の建築住宅課と米子市の住宅政策課・建築相談課、鳥取県住宅供給公社、2階には米子市の建築企画課、都市整備課、道路整備課、3階には鳥取県米子県土整備局が入居している。
これまで、米子市の建築関連部署は米子市役所本庁舎にあったが、新庁舎に移転することで関連機能が集約し、コストの削減や業務効率化につながったという。
また、浸水対策のため施設裏に高床式の熱源供給棟を配置し、屋上には非常用発電機や太陽光パネルを設置するなど、新施設は地域の防災拠点としての役割も備えている。
県と市は、それぞれで庁舎の老朽化の課題を抱えており、共同で建てると建設費を抑えられ、同種の業務を行う部局を同じ場所に集めると業務の効率化も図れる。
こうした背景から共同で整備を進めることを検討し、米子アリーナと同様BTO方式によるPFI事業として進めた結果、ここでも美保テクノスを代表とするグループが優先交渉権者に選ばれた。
なお、鳥取県および米子市が実施するPFIにおいて代表企業が県内事業者となるのは初のケースだったという。
近年は少子高齢化をはじめとする社会構造の変化に伴う地域経済の停滞、税収減など、地方自治体はさまざまな課題に直面している。高度経済成長期に建てた施設の更新時期も迫っているが、限られた予算で実施することも求められる。
鳥取県と米子市の事例のように、今後は複数の自治体が共同で進める施設の整備事業が増えていくのかもしれない。
健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))