みなさん、こんにちは。私は北海道で不動産賃貸業と小さなプロパンガス会社を経営しているガスタンク少佐と申します。過去に「大家列伝」と「大家対談」で取り上げていただいているので、大家業についてはそちらをご覧ください。
大家業界ではお馴染みの(?)プロパンガスですが、今回はガス屋目線で、都市ガスとの違いといった基本的な部分から、ルール改正で今後はできなくなるという「設備貸与」とその影響まで、私の知っていることをお伝えしようと思います。
■プロパンガスの特徴は「独立型」であること
さて、そもそもプロパンガス(LPガス)とはどのようなものかご存じでしょうか?大都会に住んでいる方は、都市ガスやオール電化の住宅に住んでおり、プロパンガスを使ったことがない方も多いかもしれません。
しかし、大都会を離れ、地方で戸建てやアパートを眺めると、建物の横にクレー色、直径40~60センチ程で円柱の「ボンベ」がついているのが日本のどこでも見られます。これがプロパンガスのガスボンベです。
都市ガスが普及する前は、このプロパンガスが家庭のエネルギーの中心でした。昔からあるエネルギーのため少し時代遅れに感じる方も多いかもしれませんが、今も全国の38%相当する2,200万世帯が利用するエネルギーのひとつです。
ちないに都市ガスの割合は、プロパンガスよりも少し多い46%。この20年で一気に増えた感のあるオール電化ですが、実は全体でみると16%にとどまっています。(出所:経済産業省「第4回液化石油ガス流通ワーキンググループ事務局提出資料~料金透明化・取引適性化の動向)
プロパンガスの最大の特徴は、前述のように建物一軒一軒にボンベが設置されているところです。都市ガス、電気、水道のように、いわゆる「ライフライン」には接続されていません。「独立型」のエネルギーなのです。
そのため、地震などの災害で「ライフライン」が破壊された時も、プロパンガスは供給が途絶えません。災害時でもお湯を沸かし、料理ができるのです。そのため「防災対策」のためにプロパンガスを使う人も増えています。
■都市ガスの方が安い!と思っている人が誤解していること
プロパンガスと都市ガスは供給方法が違うだけと思っている方も多いのですが、実際はガスの成分自体が違います。具体的には都市ガスよりもプロパンガスの方が熱量(カロリー)が2倍ほど強いです。
そのためコンロの火の大きさは、プロパンの方が小さくて済みます。
ざっくり簡単に言い換えれば、都市ガスはエネルギーの密度が薄く、プロパンガスは濃いのです。
「都市ガスのコンロの方が火が大きい!」という理由で、都市ガスの方が高火力だと思っている方もいますが、それは間違いです。むしろ、それだけ大きくしないと都市ガスは料理に必要な熱量が出ないともいえます。
火が大きくなりすぎると料理がしにくいため、都市ガスの供給エリアでありながら、高密度エネルギーのプロパンガスを利用している中華料理屋やラーメン屋はたくさんあります。
この2倍差がある熱量の関係から、同じような生活スタイルだった場合、都市ガスはプロパンの約2倍ガスメーターの針(数値)が回ることになります。(例えば、熱量で見ると都市ガスの10㎥は、プロパンガスの約5㎥になります)。
前述の火の大きさと同じような理由で「都市ガスの単価は安い!」と言う方がいます。しかし、これは単純には比較できません。プロパンガス会社は都市ガスと違って値段が会社ごとに違うので、高い会社に当たるとそう感じるかもしれません。
しかし、熱量を基準に考えた場合、都市ガスの単価を約2倍にした値段でプロパンガスの単価と比較しないと正確には比較できないことになります。
■ガス供給以外にも様々な困りごとを解決
このような特徴を持つプロパンガスですが、供給する会社も電気会社や都市ガスとは違い、中小企業が中心です。その理由ですが、大きなインフラ投資を必要としないため、小さな会社でも経営できたからだと思われます。
プロパンガス会社は供給先が家を建てた時から毎月のようにその家に通い、プロパンガスボンベを運んだり検針したりします。
私も3代目として、地方で小さなプロパンガス会社を経営しており実務も行いますが、家の敷地内へ入るということもあり、他業者と比べ、お客様とは密なコミュニケーションをとることができます。電気や都市ガス会社ではそういうことはないでしょう。
プロパンガス屋はお客様と会って「困りごと」を聞くうちに、御用聞きのような感じで仕事が増えていくことがよくあります。アニメのサザエさんでは「サブちゃん」が裏口からサザエさんと会話するシーンがでてきますが、あんなイメージです。
(サブちゃんは酒屋で、設定の1970年代は酒屋は配達していたため御用聞きだったのですね。ちなみに私の会社も当時はガス屋と一緒に酒屋もやっていました・笑)
よくあるケースとして、「水道修理」「電気配線」「大工工事」「不用品回収」等があります。このデジタル社会、インターネット時代に信じられないかもしれませんが、このような超アナログの対面サービスを行っているプロパンガス屋は実は相当多いのです。
今回は、プロパンガスとはなんなのか、また、どんな業態なのかを紹介しました。明日の後編では、実際の超アナログサービスの内容や2025年よりルールが変わる「設備貸与」、そして今後の大家とガス屋の理想の関係等についてお話しします。